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「ヴィルおじいちゃん、今日もお話して!」

「ロザリー・・・もうおじいちゃんの知ってる昔話はそんだけだよ」
暗い空にキラキラと星の瞬く空の下、フランスのとある民家で老人がまだ幼い孫にお話をしていた。

「じゃあ、おじいちゃんの昔話が聞きたい!」

「昔話か・・・」
老人は何かを思い出し、頭をくねらせ、ため息をついた。

「こんな事、お前に話していいのかな・・・なぁ、ロザリー。
今から話すお話、信じてくれるか?」

「信じるよ」
純真な瞳をした孫は老人を見つめた。

「よし。
でも、 今から話すのは昔話とは言っても、ちょっと前の事だよ。
お前の知ってるリュシアンおじいちゃんのとこから帰ってきた時の事なんだ・・・」


ロザリーは「思い出列車」というのを知ってるか?

一人の客を乗せると、その人にこれまでに起こってきた人生をもう一度見せてくれる不思議な列車なんだ。
嬉しかった事も悲しかった事も軽く一変に見ることができるんだ。


ただし、自分の降りたい駅にきちんと降りずにそのまま乗ってしまうと、その列車からは永遠に降りられなくなってしまうんだ。

人呼んで、その列車の事を「思い出列車」という人もいれば、
人呼んで、その列車の事を「幽霊列車」と呼ぶんだ。


このお話は、おじいちゃんがその電車に一度乗ってしまったお話・・・


選択肢:☆夜行列車

~夜行列車~


・・・ある晩の事だった。

「間もなく、6番線に列車が参ります」
一人だけの地下鉄の中でアナウンスが響いた。

「帰りが遅くなっちまった」
友人のリュシアンの家で長居をし過ぎた。
ワインが身体中にまわってほろ酔いしている。

酒には弱い。
だが、他人が買ってきた酒を拒むのは失礼に値すると思い、ついつい飲んでしまう。

しゃっくりが止まらない。
気持ちが悪い。
電車の中で吐いたらどうしよう。

そう思ううちに、電車は来た。

プシューーーー・・・
入り口が開いた。


列車へ乗り込むと、夜行列車為だったのか、駅と同様。
誰もいない。
おまけに、ライトの明かりが弱いのか、変に暗くさみしい雰囲気を醸(かも)し出していた。

「気味悪りぃな・・・」
誰かに聞こえるような大きさで独り言を呟いた。
誰でもいいから、老若男女一人いてくれ・・・


選択肢:☆赤ん坊

~赤ん坊~


そう願った時だった。

きゃっきゃっ・・・
赤ん坊の笑う声が近くから聞こえてきた。

こんな時間に赤ん坊と夜行列車に乗るなんて。
赤ん坊も大変だなぁ。

どんどんその声の方へ歩いて行った。
歩くたびに、その声の他に席に座ってる人間はいないかと左右の列をチラと確認したが、誰も座っていない。

「いないな~い・・・」
その子の母らしき声も聞こえてきた。


「おや・・・」
聞こえてきた席の近くまで行くと、暗い列車の中、そこの席だけぼんやりとホタルのような光を放っているではないか。

不思議に思いながら席へ着くと、その光はだんだん弱まっていった。
「ばあ!」

席に座っていた若い女が抱っこをしながら、片手を使って赤ん坊に、いないないばあをしていた。

きゃはは・・・
母を見て満足気に笑う子供の姿があった。
微笑ましい場面に出会った。
こちらもつい、笑ってしまった。

女はこちらの視線に気付いたのか、こちらを見上げた。
女はまだ若かりし頃の亡き母と、生き写ししたかのように、そっくりだった。

「可愛いお子さんですね」
気まずくなったので、直ぐに返事をした。
が、母はこちらに目を合わせず、その隣を見つめていた。

「ごめんなさい」
どこを見てるのやらと思い、振り向くと、そばでごつい顔をした、駅員が立っていた。
一体、いつからいたのだろうか?

「お静かに願います」
その人は冷たく一言ポンと吐くと、元の場所へ戻って行った。
戻って行くのと同時に、その人も不思議な光を放っていることに気づいた。

・・・おぎゃあ、おぎゃあ!!

赤ん坊が泣き出してしまった。
相当、駅員の顔が怖かったのだろう。

「ほぅら、 ヴィルジール。
泣かないで」
女は赤ん坊を必死にあやそうとした。
私は驚いた。

女の口から、この赤ん坊が自分と同じ名前であったことを明かしたからだ。
偶然が偶然を呼んだのだろうか・・・

「あの・・・すみません。
ラシェルさんですか?」
私ははっきりと尋ねたが、無視されたというより、聞こえていないようだった。
ラシェルは私の母の名である。
女はゆっくりと立ち上がり、赤ん坊を抱きかかえたまま、駅員と同じように通路を通って闇の中へさっさと歩いて消えた。


選択肢:☆少年

~少年~

なんて不思議な親子に会ったのだろう・・・
まさか、本当にあの女は私の母だったのだろうか。

この世界は本当に不思議がいっぱいなのだと、老人までにもなって改めて感じさせられた。

私は女の座っていた席に腰かけ、窓から景色を覗いた。
「な、なんだこれは!?」

驚くのはこれだけではなかった。
ほろ酔いして呂律のまわらない自分だったが、この時ばかりは叫んでしまうぐらい、これもまた不思議な世界が広がっていた。

夜の地下鉄のトンネルの中を通っているはずなのに、窓からは太陽を浴びた大きな花畑が広がっていたのだ。
花畑の遠くでは、小さな少年達が三人ほど鬼ごっこか何かをして、追いかけているのが見えた。

栗毛の二人の少年を、金髪の少年が追いかけている。
金髪の少年は間違いなく、幼い自分だった。
「フィリップとリュシアンじゃないか!!」

私は小さい頃、リュシアンの他にフィリップという友人がいた。
しかし、あの日を境にロンドンへ引っ越してしまったのだ。

その後も会っていなかったなぁ・・・今頃どうしてるのだろう?

思い返す間もなく、列車から見る少年達はだんだん小さくなっていった。
列車は再び、真っ暗なトンネルの中を突き進み始めた。


選択肢:☆青年

~反抗期~


「本当、懐かしかったなぁ・・・?」

トントントントン・・・
まな板の上で、野菜か何かを切る包丁の音がした。

窓の外で暗闇の中にぼんやりと大きな光が目に入り込んできた。
光の中でさっき出会った女が、台所で何かをこしらえているのが見える。
「母さん・・・」

若い女は前よりも老けこんでいた。
長年の疲れが身体に現れていた。

「母さん、弁当まだ?。
学校に遅れるって!」
少年から青年へ成長した私がいた。

「ごめんね」
女は青年に弁当を手渡した。

青年は機嫌の悪そうな顔で舌打ちして、そのまま顔を合わさず出て行こうとした。

「待って」
女は青年の片手を両手で握りしめて、ドアの前に引き止めた。
家事の手には、たくさんのシワと包丁の切り傷、女手一つでやりくりしてきた跡が入って痛々しかった。

「いってらっしゃい」
母は優しい笑顔を息子に見せた。

「気持ち悪いんだよ!
汚ねぇ!」
息子は素っ気なく、手を払った。
ドアを開けると振り返らずに学校へ走って行った。

「・・・」

光はしぼみ、だんだん小さくなった。

この作品の詳細情報

ヴィルジールおじいちゃんの思い出列車

ヴィルジールおじいちゃんの思い出列車

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作成日:2013/04/01

作成者:名無し

総ページ数:13

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