新しいプロジェクトを作成しました。

(作成したページはまだ公開されていません)

作成したページを公開するためには、プロジェクトを公開する必要があります。
公開後は、ページを編集・削除することができなくなりますので、
必ず物語が完結した状態でプロジェクトを公開するようにしてください。

閉じる

episode1


「もう、行かれるのですね・・・」

「はい、 僕らはまたここから、戻らなければなりません」

「ありがとう。
君たちには悪い事をしてしまった。 
本当にすまない事をした」

「いえ」

「私たちもこれから小人さんらの家に行き、隣国へ式を挙げに行きます」

「そうですか・・・若い女王様、ご結婚おめでとうございます」

「結婚は明日よ」
姫君は祝福されると、頬を赤らめた。

「・・・そろそろ、僕らは帰ります」

「では、気を付けてお帰り下さい。
さようなら」
僕らは手を振りながら、城をあとにした。


一人の少年と一羽のウサギと、一羽の白鳥のヒナが森の中を歩いている。
「この剣、色んなモノを斬ってきたはずなのに、全然刃こぼれしてないや。
自分のとこの鍛冶屋よりもすごいや」

少年は剣を欲しがるような目で見た。
剣は鏡のように少年の顔を写した。
少年の顔には、太陽の反射した光が斜めの線をつけている。
「返しに行くって言ったの誰だっけ?」

「そりゃ、そうだけどさ。 眺めるくらい別に・・・あっ」


少年が急に足を止めた。
前の方から人の声がたくさん聞こえてきた。
声のそばへ駆けつけると、人が何かを囲んで集まっていた。
何事だろう・・・

人を掻き分け先頭へ飛び出ると、目の前に純白の衣に包まれた花嫁と花婿が城の階段を優雅にゆっくりと降りてゆくのが見えた。

花婿の目のすぐ下には、この国を守ろうと魔物に立ち向かおうとした男の勲章が刻まれていた。
花嫁のふんわりとしたドレスから見え隠れする足には、魔法の靴が密かに煌めいていた。

少年は若き王と王妃の近づくタイミングを見計らって、小走りした。
目の前にどんどん近づくと、家来が槍で警戒した。
「君、何のつもりで?」

「王様の剣をお返しするためにここへ・・・」
剣をそっと見せた。
家来は剣を一目見ると、静かに前へ通した。

王の領域へ躍り出た。
僕は遠くから、少年を見守る。
急なゲストに国民は騒いだ。

少年は周りの事を気にかけず、二人にお辞儀した。
王妃も少年に微笑みかけてお辞儀を返した。
王は動揺の隠せない様子を見せつつ、礼をした。


選択肢:episode2

「これはお返しします」
少年は剣を差し出し、膝まずいた。

「表をあげなさい」
穏やかな口調で命令した。

「・・・もうこれは君のものですよ。
私たちを救ってくれたお礼です」

「お、王子・・・いえ、王様。 
これは先祖から受け継がれてるモノですぞ!」
そこへ割り込むように、大臣と思われる人が物申した。

「いいのですよ、カミーユ」

「王妃にも聞きましたが、 もし君と君の仲間が彼女をここまで送っていなかったら、今頃私は彼女を知らずにこのまま人生を終えていたかもしれません。
私は今、彼女に会えた事も、君らに会えた事にも感謝してます。
ありがとう 」

王は人々の前で、少年に頭を下げた。
意外な動作に人々はまた驚いたが、それを祝福するように拍手の雨を降らせた。

「シンデレラ、お幸せに・・・」
少年はニッと笑って再びお辞儀をすると、僕のほうへもどっていった。


「さぁ、お家へ帰ろう」
一人の少年と一羽のウサギと一羽の白鳥のヒナは、ひっそりと森のほうへ歩き出した。

カサカサカサ・・・・・・

優しい木漏れ日に包まれながら、緑の葉がさらさらと落ちてゆく。
風は森の中を駆け巡り、小鳥たちは空の上で、下から響くピッコロの音に合わせながらさえずる。

クワクワッ クワクワクワ・・・・・・
雑巾もそれに負け字と必死に歌うが、やはり勝てなかった。

森の道幅が広がるにつれて、一つの湖が見えてきた。
雑巾と初めて会った場所だ。

雑巾は懐かしむように、森の中を走った。

僕はポケットからここで採れたものを手にとってみた。
二人の持っていたキノコの欠片は乾びて粉末になり、ボトルの中の水は空っぽになり、何かに安心するように二つとも役目を終えていた。

雑巾ともここでお別れである。

「僕らもこれからお家に帰るね。 
アヒル君もお帰り。 
巻き添えにしちゃったけど、本当にありがとう」
少年と僕は雑巾に向かって手を振り、湖から離れた。


選択肢:episode3

クワックワクワクワ・・・
雑巾の鳴き声が背後からだんだん近づいて来た。
声につられて振り返る。
グレーの羽をパタパタさせながら、白鳥のヒナは何かを求めるようにこちらに走り、僕を押し倒した。

クワッ!

「何すんだよっ・・・」
急に倒されて不機嫌になった。
こういう事には慣れていない。

お腹の上で雑巾は嬉しそうに羽をバタつかせた。
「連れてってほしいの?」

少年の言葉に反応して、今度は少年の元へ走って来た。
「しょうがないなぁ」

苦笑いをしながら、雑巾を飼い犬のように抱き上げ、今度こそ僕らは湖を出た。


森の中をひたすら歩き続けた。
足がだんだん痛くなってきた。
少年は雑巾をずっと抱いて歩くのは、流石に辛かったので、下で歩かせていた。
少年の歩き方は前よりも滑らかになっていた。

前へ進むたびに、サイドにチラチラと野花が咲き誇っていた。
野花には蝶々が飛び交い、のほほんとした景色を醸し出す。


森がだんだん後ろへ遠ざかる。
ここを真っ直ぐ行けば、雪の降る不思議な村のはずだ。 

「・・・?」


僕らは遠くから見える前の景色に、目を疑った。
不思議な村の雪景色は跡形もなく消え、代わりに緑の若草の生える春景色の村が出迎えた。

再び村を通った。

「きっとここにも、呪いがかかってたんだね」
凍りついた心が溶かされたように、人々の目つきも優しく緩んでいたような気がした。

遠くから聞こえる、誰かの鳴らす美しい教会の鐘が、街行く人の耳を通り抜けてゆく。
少年はその音の方に耳を澄ませ、一瞬立ち止まると、また何かを思い出したかのように、静かに村の出口まですたすたと歩いた。

僕らも黙って、後に続いて村を通り過ぎた。


選択肢:episode4

村を出て、天上がオレンジに染まる頃、ようやく壊れた橋のところに到達した。
吊り橋は来た時と同じ、元の姿を取り戻していた。

少年を先頭にして、僕は雑巾を抱き、騒がないよう目の上に軽く手を被せて、きしむ音を聞きながら前へ前へと進んだ。

いろんな方向へとゆらゆら揺れる。
下では川がサラサラ流れている。
空の上で綱渡りをするように歩く僕らに、風が涼しげにあたった。
クワックワ・・・

一歩一歩慎重に渡りながら、不安になりながら無事に帰り行く地へ足を踏み入れた。

僕らは振り返った。
僕の国よりも不思議な世界。
その世界の中で出会った人々との出会いと別れ。
魔女との決闘・・・

何もかも見るものが新鮮で、後ろに見えた物は、様々な記憶を呼び起こした。

少年は目を細めながら夕日を見た。
「もうすぐだね」

夕日の下で歩く黒い三つの影がぼんやりと浮かんだ。


「みんな、ただいま」
暗くなった少年の故郷は、誰ひとり外をほっつき歩いていなかった。
我が家の戸の前に着くと、少年は立ち止まってノックをした。

トントン・・・

「今いきますよ。 
こんな時間に誰だろう?」
僕らはその声を聞くと思わず、クスッと笑ってしまった。
少年の父の声が反対側からは丸聞こえだったのだ。

ギィーーーーーー
古くきしむドアからゼペットさんが顔を覗かせた。

「・・・ピノキオ!!」
ゼペットさんは息子を見ると扉を勢いよく全開にして、少年を抱き上げた。
少年は驚かせようと、わざと生身の足をふらつかせた。

「お、お前の足!
とうとう人間の子になったのか!?」

「魔女をやっつけたんだ」

「なに無茶な事をしよって・・・急に家を出て行ったから、本当に心配したんだぞ! 
でも良かった。
また帰ってきてくれて。
これも、おまえさんのおかげだ。
ここまで一緒に来てくれてありがとう。
神様、我が子を人間にしていただき、ありがとうございます」
ゼペットさんは僕に向かって礼を言うと、夜空に瞬く一番星にも礼を言った。


選択肢:episode5

ニャア~ン。
何処からか懐かしい声がした。
少年の飼い猫が、ドアから飛び出して少年の足元へ走ってきた。
「フィガロ!」

「こいつもずっと会いたがってたんだからな。
さぁ、今日はお祝いだ!
お前さん、今日もここに泊まっていってくれ」

「では、お言葉に甘えて」

「父さん、この子もいいかな?」

「・・・お?」
少年は雑巾を持ち上げて、父親に見せた。

「この子も旅のお供をしてくれたんだよ。
一緒に暮らしてもいいよね?」

「それはどうだか」
少年はそっと下へ置いた。
その近くにいたフィガロは雑巾から少しだけ距離を置いて、円を描くように周りを歩いた。
警戒しているのだろうか?。
雑巾はその意味不明な動きに困っているようだった。
だんだんその円は小さくなり、雑巾に飛びついた。

「フィ、フィガロ!」
黒いおまんじゅうは灰色の雑巾をペロッと小さなピンクの舌で舐めた。
どうやら、気に入ったようだ。

「今日からまた賑やかな日々がおくれるんだな・・・」
ゼペットさんは新しい家族を受け入れると、僕らを家の中へ入れた。



僕が初めてここへ来た時のよりも、ゼペットさん達は張り切って振舞ってくれた。
「・・・明日はおばさんのところへ行くんだ」
少年はスープを飲みながら、明日の話題を切り出した。

「そうか。
という事は、お前さんは明日でこの世界から出て行ってしまうわけか」
ゼペットさんはそういいながら、こちらを見た。

「そうですね・・・
それにしても、不思議です。
ここは僕の世界とは全く違っても、何かが同じだった気がするのです」

「この世界は、『自分で切り開く世界』。
自分達の好きなように創りだせる世界。
でも、不思議な事に、みんな最初から与えられた通りに辿り着くんだよ」

「『最初から与えられた』とは?」

「お話を作った生みの親、作者の考えて与えた結末の事だ。 
私たちは、とあるお話のヒトコマに過ぎない。
君の世界はきちんとお話に沿って、進んできた。
ワシらの世界が君らの世界の裏、または影となって存在している事を忘れないで欲しいんだ。
この意味、分かるな?」

「いつも一緒というわけですね」

「まぁ、そういう事だ」


・・・僕らは夕食を終えると、再び同じ部屋に寝に行った。

この作品の詳細情報

不思議の国の白ウサギ・第九章~物語の結末~

不思議の国の白ウサギ・第九章~物語の結末~

→作品情報を見る

作成日:2013/03/30

作成者:名無し

総ページ数:12

閲覧数:11771

コメント数:0

35603ポイント

最初のページ